大好きな先輩が旅立った
酒と読書をこよなく愛する人だった
晩年はある雑誌のエッセイ大賞を狙うぞと、ペンを持とうとしては難しい病にかかり頓挫してきた。
しかし夢叶わず長い闘病生活を経て静かに天に召された。
数年前に独り寂しく過ごす入院先から届いたメールがある。
病院の窓から晩翠通りを見下ろしています。
片道二車線のこの道は毎年銀杏の木の衣替えで黄金色に色づいた葉が乱舞します。
冬支度を急ぐのは なにも人間に限ったことではなく、この世に生を受けたものに与えられた習わしの証なのです。
旅行者なのでしょうか 寄り添いながら片手にガイドブックを持ってペアで目的地を探しています。
この辺だと晩翠草堂が有名なので そこかもしれない。
つい声をかけたくなります。
微笑ましい光景は自然と自分の過去に投影されて 懐かしい世界に戻ってしまいます。
ゆっくりと流れていた時間に浸りキラリ輝いていた二人のワンシーンに思いを馳せていると いつの間にか夕闇に包まれ あっという間にライトアップの光景に変化してしまう。
秋は日が暮れるのが早い
明日はどんな顔が待っているのだろうか。
私はこのメールを読みながら『最後の一葉』を思い浮かべた。
先輩が旅立った今 この懐かしいメールの文面を何度か読み返し じんせいテラスの中での一足早い本年度エッセイ大賞を送る事にした。
コラム 天下一品を仙台に持ってきた男の34年目の独り言 もノスタルジックを感ずると評判が良い。
これからも素敵なメッセージを記憶と記録に残してゆく じんせいテラスでありたいと思う。
少し長くなるが、、、先輩が元気な頃 かなり泥酔して送ってきたメールで
ある。
卵と鶏 出逢いと別れ
どちらか先かわからない
人生の先もわからない
お酒を飲めばわかるかもしれない
飲んでみたら酔うことがわかった
もっと飲んでみたら もっと酔っぱらった
気がついたら自宅で寝ていた
解ったのは財布からお金が無くなっていたこと
真実は一つ
本能と煩悩は常に私を惑わせる
ただただ冥福を祈るばかりである。